会津の伝統民芸を現代へ
会津での張り子の歴史は古く、蒲生氏郷公の時代に遡ると言われています。
もともとは下級武士や農民が冬の間の収入を賄うために広まったものでした。
野沢民芸は以前はこけしを作る木工の工房でしたが、50年ほど前に赤べこなどを作る民芸品の組合となってスタート。
製法を機械化したり新しい技術を取り入れたりしているので、いわゆる伝統的な民芸品の工房とは違って見えるかもしれません。
でも、逆に言えば伝統を貫いているところからは新しいものはなかなか生まれにくいものですよね。
私たちは、そこから離れて新しい民芸品、アートとしての民芸品を知ってもらいたいと思っています。
かわいくて、気軽に部屋に飾れて、若い人も手に取りやすい、そういうものを作っていけたら思っています。
新しい民芸品への挑戦
新しい民芸品に挑戦してみようと思ったのは震災があってから。
あの出来事以降、福島から何か新しいものを発信していこうという動きが出てきて、うちにも
「やってみませんか?」と声がかかったんです。
私自身、普通の民芸品を作っていく中で、違うものを作りたいという願望はすごくあって。
それで、どんなものを作ろうかと考えた時に、適度にデフォルメされていて汎用性のあるものが「起きあがり小法師」でした。
いざ作ってみると「集めたくなる」「かわいい!」など好意的な声を多くいただき、いろいろなブランドや百貨店からもオリジナルが作りたいと注文が来るように。
それに伴って、きちんとしたものを作らねばという責任感は強くなりましたね。
うちの商品はひとつひとつ手描きなので、印刷したように正確にはできません。
でも、「民芸品だからいいじゃん」っていうのはこっちの甘え。
一定のクオリティだけは守るよう、プライドを持って仕事をしています。
町の交流基点となる企業に
私は美術の勉強をしていたわけでもなく、普通の高校を卒業し、この道に進みました。
最初は先輩の見よう見まねで描き始め、少しずつひとりでできるようになっていったのです。
作り手になって33年。
これまで身についた伝統的な民芸品作りの経験や感覚が、新しい作品にも活かされていると感じています。
もちろん、難しいキャラクターの依頼の時は失敗もたくさんします。
でも、そこでギブアップはしたくないんですよね。
「絶対できるようにする!」と思って取り組んで、試行錯誤することがスキルアップにも繋がるんだと思います。
2年ほど前に会社の一角をギャラリーにしました。
前はお客さんが来てもお茶を飲んでもらったり、絵付け体験などをしてもらうスペースがなかったのですが、今は気軽に訪れていただけるようになりました。
町を盛り上げるには企業も努力しないと!(笑)
多くの方に愛される商品づくりはもちろんですが、町の人や観光の方の交流の場になれるよう、努力していきたいと思っています。